毎月発表される消費者物価指数(CPI)一枚で、株式と債券が同時に揺れます。インフレは単に物の値段が上がるという生活実感以上の意味を持ちます。物価は中央銀行の金利決定を左右し、その金利が再びすべての資産価格の基準になるためです。
インフレとCPIとは
インフレは全般的な物価水準が持続的に上がる現象です。これを数値で示す代表指標がCPIで、家計が買う商品・サービスの組み合わせの価格を追跡し、1年前と比べてどれだけ上がったか(前年比上昇率)を示します。
CPIには二つの種類があります。ヘッドラインCPIはエネルギー・食品を含む全体の物価を、コア(core)CPIは変動の大きいエネルギー・食品を除いた物価を示します。コアCPIは基調的なインフレ圧力をよりよく示すとされ、中央銀行と市場が特に注目します。
物価が上がる、下がると言うときは、通常上昇率が高まるか低まるかを意味します。上昇率が鈍化(ディスインフレ)しても物価自体はなお上がっており、物価水準が実際に下がるデフレとは異なります。
2%を長く上回るとFedは利上げを迫られ、2%へ近づくと緩和の余地が生まれます。
なぜ市場が敏感に反応するのか
核心の連結環は中央銀行です。インフレが目標(多くは2%前後)より高く粘着的なら、FRBは金利を上げて需要を冷やそうとします。金利が上がると割引率の上昇で株式バリュエーションが押され、既存の債券価格が下がります。逆に物価が安定すれば、利下げの余地が生まれリスク資産に好意的な環境になります。
そのためCPIが予想より高く出ると、金利がより長く高いままだろうという懸念で株式・債券がそろって軟調になり、予想より低く出ると安堵のラリーが展開されがちです。ここでも核心は予想に対するサプライズです。
資産ごとに異なる影響
現金はインフレの直接の被害者です。物価が上がると現金の購買力が削られます。債券は固定の利息を払うのでインフレに弱く、特に満期が長い債券ほど打撃が大きくなります。株式は両面的です。適度なインフレは企業が値上げで売上を伸ばせるので悪くありませんが、急激な高インフレはコスト上昇と利上げで重しとなります。価格転嫁力が強い企業が相対的に有利です。金・コモディティ・不動産といった実物資産は伝統的にインフレヘッジ手段として挙げられますが、万能ではなく、金利環境によって効果が変わります。
実質金利も合わせて見る
投資の観点でより重要なのは、名目金利からインフレを引いた実質金利です。実質金利がマイナスなら、つまり物価が金利より高ければ、現金・債券を持つほど購買力が減り、資金がリスク資産や金へ移る傾向があります。逆に実質金利が上がれば安全資産の魅力が高まります。
どう読むか
- トレンドを見ましょう。 一か月の数値より数か月の方向(加速か鈍化か)が重要です。
- コア物価と細目を確認しましょう。 住居費・サービス物価の粘着性がトレンドを左右します。
- FRBの反応関数を考えましょう。 同じ数値でもFRBが何をより重視するかで市場の解釈が変わります。
合わせて見るとよい指標
インフレはFRBの政策金利、国債利回り、金価格とまとめて見るとき文脈が明確になります。
Global Market Dashboardのマクロタブでは、米国の消費者物価(CPI)上昇率を政策金利・国債利回り・雇用指標とともに提供します。物価の流れが今どこへ向かっているか確認してみてください。
FearGridのMarket Signalでこの指標を読む
物価は、FearGridが公開データから自ら算出するMarket Signal総合指数の三つの柱の一つです。物価の柱は、コアCPI(食品・エネルギーを除く)の前年比が連邦準備制度の2%目標からどれだけ離れているかで測ります。目標に近いほどリスク資産に追い風、上下どちらであれ離れるほど逆風と読みます。この柱は総合で20%の比重を占め、金利(35%)や心理(45%)より小さいものの、方向感を定める軸になります。
この値も直近3年の分布に対する相対的な位置に換算されるため(3年平均が中央)、今の物価が平常時より高いか低いかを一目で確認できます。ホーム上部のMarket Signalで、物価の柱が今どの位置にあるかを見てみてください。
一次情報: 消費者物価指数、米BLS
本記事は情報提供を目的としており、投資勧誘ではありません。